エッセイ / 科学とエンタメの数値的な視点の比較
再現性を求める科学と、特異点を求めるエンタメ
科学とエンタメは、どちらも現象を「計測」しようとする点において共通している。科学が物理量や化学反応の速度を単位で定義するように、エンタメの分野では拡散数や滞在時間といった指標を用いて作品の影響力を定義する。どちらも、目に見えない現象を数値という共通言語に変換し、座標軸の上に配置することで、客観的な分析を試みるアプローチである。
しかし、その数値に対する向き合い方は決定的に異なる。科学において重要なのは「再現性」であり、誰がいつ行っても同じ数値が得られることを正解とする。一方で、エンタメにおける価値は、しばしば「予測不可能な乖離」に宿る。平均値から大きく外れた数値、つまり特異点が発生したときに、その作品は社会的な話題となる。定数を求める科学に対し、エンタメは変数の振れ幅を追う分野だといえる。
私が分析の過程で迷うのは、その数値の「起点」についてである。科学の数値は物質的な根拠に基づいているが、エンタメの数値は、人間の「心地よさ」や「切なさ」といった、単位に変換できない感覚的な反応がトリガーとなって積み上がる。私は統計表の曲線は正確に読み取れるが、その曲線を押し上げた元の感情をどの単位で測定し、どう基準を設けるべきか、いまだに正解に辿り着けていない。
数値化できない感情を、無理に数値に変換することは、情報の欠損を意味するのだろうか。
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