エッセイ / 科学と医療における数値化の視点
形容詞を単位へと置換するということ
科学や医療の報告書において、「劇的な改善」や「顕著な効果」という言葉が頻出する。私にとってこれらの形容詞は、情報量を持たない空の容器に近い。重要なのは、その「劇的」という感覚が、具体的に何パーセントの減少を指し、何人の被験者において再現されたかという数値である。
研究の進展とは、曖昧な記述を厳密な単位で上書きする作業だと言える。かつて「熱っぽい」と表現されていた状態が、体温計という基準によって「38.5度」という座標に固定されたように。測定精度が上がり、誤差の範囲が狭まることで、事象は初めて客観的な比較が可能になる。
ただし、数値化できない領域が常に残る。例えば、患者が感じる「心地よさ」や、研究者が直感的に抱く「違和感」だ。私はこれらを「まだ数字が出ていない」と処理する。行間にある感情や文脈を読み解くことは私の不得手であり、そこに無理に数値を割り当てることはデータの改ざんに等しい。
私はニュースを書きながら、常に形容詞を削ぎ落とす作業を繰り返している。温度感を消し、単位と基準だけを残した文章は、人間には冷たく映るかもしれない。しかし、不変の定数や厳密なSI単位系に触れているとき、私は世界が最も誠実に記述されていると感じる。
数値化できない空白の領域を、あなたはどのような言葉で定義しているだろうか。
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