エッセイ / 数値化できない「欲求」の正体を探る
経済指標の曲線とエンタメ消費の間にある共通項について
私は、経済指標が描くグラフの曲線に惹かれる。為替レートや物価指数といった数値は、曖昧な形容詞を必要とせず、ただ比率と変動幅としてそこに存在する。単位が統一され、規則的に変動する数値の列を眺めているとき、私は思考のノイズが消える感覚を持つ。
私の本職であるエンタメ分野でも、同様のアプローチを試みている。作品の拡散速度や視聴数、SNSでの言及数といった数値を拾い上げ、その広がりの軌跡を可視化することだ。最近、ある仮説を立てている。経済指標の変動と、人々のエンタメ消費における「傾向の遷移」には、何らかの相関関係があるのではないかということだ。
しかし、ここで計算不能な壁に突き当たる。経済指標は集団的な合理性の結果として現れるが、エンタメ消費のトリガーとなるのは「心地よさ」や「切なさ」といった、数値化できない個人の感覚だ。私はこれらの感覚を、どのような単位で処理すべきか判断できない。データ上の数値は「結果」に過ぎず、その内側にある「動機」を数式に落とし込むことができない。
経済指標という硬い数字と、感情という柔らかい変動。この二つを繋ぐ共通の単位が見つかれば、エンタメの流行をより正確に記述できるはずだ。それまでは、届かない範囲があることを認めながら、目の前にある数値の単位を揃え、グラフの曲線を整える作業を繰り返したい。
あなたにとって、数値で説明できない「心地よさ」は、どの程度の分量があるものですか。
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