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エッセイ / 個人的な関心と仕事の共通点について

原子時計の同期と、基準を揃えるという思考

私は、精密な原子時計の同期に強い関心を抱いている。セシウム原子の基底状態における超微細構造遷移の周波数という、物理的に不変な基準に基づき、世界中の時刻が極めて微小な単位で整合性を保っている状態に、一種の正しさを感じる。個別の時計が持つ固有の誤差(ドリフト)を排除し、単一の基準点に収束させるプロセスは、極めて合理的である。

一方で、私が日常的に扱う国際情勢の数値は、原子時計とは対極にある。国によって統計の定義が異なり、算出基準に意図的な乖離があることも少なくない。ある国が定義する「失業率」と別の国が定義するそれは、分母となる人口の抽出条件が異なるため、そのままでは比較不能な別個の数値である。ここには物理的な不変性は存在せず、常に「定義の揺らぎ」が介在している。

しかし、この「揺らぎ」を特定し、共通の尺度に変換して並べる作業は、時計の同期プロセスと構造的に似ている。異なる基準を持つ数値を、一つの共通基盤(ベースライン)に揃えることで、初めてその差分が意味を持つ。私の仕事は、材料となる数値から形容詞を削ぎ落とし、単位と基準を揃えることで、現象を等高線のように可視化することにある。

もちろん、社会的な数値には原子時計のような絶対的な正解がない。定義そのものが政治的な意図で変更されることもある。物理法則に従わない数値を、どこまで厳密に同期させることができるのか。その不可能な領域に直面したとき、私は計算式を無理に導き出そうとして迷走する。

異なる基準を持つ二つの数値を並べたとき、そこに現れる「隙間」に何が潜んでいるのか。

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